日本の住宅の本当の平均寿命とは?

こんにちは。
新津組 代表の新津です。

「欧米に比べると、日本の住宅の寿命はとても短い」。
皆さん一度は聞いたことがあるフレーズだと思います。
欧米の住宅が60年~80年もの耐久性があるのに比べ日本は30年前後、とする説です。

パッシブハウス等の高断熱高気密住宅が推奨される理由のひとつとして、
“高断熱化により住宅の平均寿命を伸ばすことができる”というものがあります。

日本の高断熱住宅の生みの親とも言われる室蘭工業大学の鎌田紀彦先生は
2018年発行の著書「本音のエコハウス」で次のように述べています。
「現代日本の住宅は20~30年もすると木材が腐り
 物理的に耐久性が切れてしまっていた(中略)、
 実は高断熱住宅をつくることだけでそのほとんどの性能は満足し、
 躯体を100年保たせることが可能になるのである」
(躯体:くたい=建物の柱、梁などの構造体)

私自身も、従来の木造住宅の平均寿命は30年程度だという認識でいました。
が、SNS上では「日本住宅の寿命は50年以上」との意見も見かけることがあり、
その認識の違いはどこから来るのだろう?と疑問が湧きました。

そこで、自身の知識の整理も兼ねてブログ記事としてまとめてみることにしました。
日本の住宅の本当の平均寿命は、30年なのか50年なのか、はたまたそれ以上なのか?
よろしければご覧ください。

国土交通省の見解と既往研究

国交省の資料では木造住宅の寿命計算に、大きく分けて2種類の手法が取り上げられています。
この資料の一部は工学院大学 吉田教授、早稲田大学 小松教授らによる研究成果を元にしており、
小松教授の別の研究では、もう1つの手法も提唱されています。
合計3つの計算手法が、平均寿命を推測するものとして挙げることができる、ということです。

それによると日本の木造住宅の寿命は、
「滅失住宅の平均築後年数」では32.1年。
「区間残存率推計法」では65.03年。
「サイクル年数」では77年。

とされています。

32年と77年では2倍以上も寿命に差がありますね。
何故このような違いが出るのか、各手法を細かく見ていきます。

滅失住宅の平均築後年数


国土交通省「我が国の住宅ストックをめぐる状況について」
住宅の平均寿命についての記載があります。
私が調べた限りでは、国交省の資料で平均寿命に言及しているものではこれが最新でした。
(2020年1月9日公開の資料)

ここでは、「日本の滅失住宅の平均築後年数は32.1年(2008年時点)」となっています。
(米が66.6年、英が80.6年)
冒頭で述べたように、私含め多くの方はこの数字を目にすることが多いのではないでしょうか。
この最新の公的資料を根拠に「住宅寿命30年説」を提唱することに問題はないように思えます。

注意が必要なのは、この年数は滅失(めっしつ)=無くなった建物のみが
集計対象だということです。今も使われ続けている建物は対象となっていません。
「人間の平均寿命を亡くなった人だけを対象にして計算する」ようなもので、
実際の平均寿命と比べると、かなり短い年数が出てしまう手法だと言えるでしょう。
(欧米と同じ計算方法で比較しているため、日本だけ大幅に住宅寿命が短い、
 という事実は変わらないのですが)

区間残存率推計法


国交省の中古住宅流通促進・活用に関する研究会の参考資料にあります。
(2013年開催の研究会)

計算方法については早稲田大学の尾島先生のブログから、
詳しく説明しているYouTube動画を見られますので、興味のある方はどうぞ!

ここでは、「日本の住宅の平均寿命は65.03年(2011年時点)」となっています。
この手法では、滅失住宅だけでなく現存している住宅も集計対象としています。
注意点としては、集計に空き家を含めた上で、残存率が50%となる時点を
寿命と定義していることです。(日本の空き家率は約13%)
つまり「使われないまま長年放置され続けている家」も相当数が含まれてしまうということです。
滅失住宅による推計とは逆に、実際の平均寿命よりは長い年数が出てしまう手法だと考えられます。
(日本独自の手法であるため、欧米とは比較することができません)

サイクル法


画像は、上記でも紹介しているYoutube動画、
早稲田大学 小松幸夫教授「建築ストック社会の到来とその先に見えるもの」よりお借りしました。

「サイクル年数」とはとても単純で、今現在国内に残っている住宅の数=ストックを、
今年新しく建った住宅の数=フローで割ったもの、です。

ここでは、「日本の住宅のサイクル年数は77年(2020年時点)」となっています。
この手法は平均寿命を推計するというよりもむしろ
「住宅がすべて新しいものに入れ替わるのに何年かかるか」を把握するためのものです。

コロナ等の影響で年間の新築棟数が落ち込めば、その時点のサイクル年数はぐっと長くなります。
建てられる住宅の性能がいっさい変わっていなくても、
人口減で着工棟数が減っていけば、サイクル年数もこれまた長くなっていきます。
そのため、住宅の平均寿命という意味ではあまり適していない手法だと思います。
(1998年時点のサイクル年数は日本30年、アメリカ103年、イギリス141年)

私の意見は…

手法によって平均寿命は長く見えたり短く見えたりしてしまうことが分かりました。
計算手法の異なる複数の統計を見ながら、各自で推測するしかないのが現状だと思います。

私個人としては、「滅失住宅の平均築後年数」の32.1年が
感覚的に最も近いかな?と思っています。
実際のところはもう少し長く見て、35年~40年前後でしょうか。
それだけの時間があれば家族構成もライフスタイルも大きく変わってきますので、
住み替え・建て替え・改修を行うお客さまが多いように感じます。

30年で家を壊して住み替えるのか、もっと長い期間住み続けられるような家を作るのか。
それは個人の価値観によるものも大きいかと思いますが、
家を建てるための資源が有限であるのは間違いない事実です。
木材ひとつとっても、植樹して収穫可能になるまでにも40年~60年の長い時間が掛かります。
少なくともその時間よりも長い期間使わない限り、必然的に資源は枯渇していってしまうでしょう。

長持ちする家を代々住み継いでいけるのであれば
子世代孫世代は新築のお金を払う必要もなくなり、家族の経済的負担は確実に減っていきます。

家を建てる際には、ぜひ「家の寿命」を気にしていただければと思います。

まとめ

・日本の木造住宅の平均寿命は、計算手法によって32年~77年まで幅広い!
・国交省の最新資料では32年となっている!(実際にはもう少し長い可能性が高い)
・できるだけ長持ちする家を建てて、環境と子どもたちの家計を助けよう!

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