パッシブハウス施工日誌⑥ ~基礎断熱・発泡ガラスボード編~

こんにちは!新津組の新津です。

いよいよ今回より、パッシブハウスにとって重要な断熱工事へと入っていきます。
新しい断熱材「発泡ガラスボード」の施工レポートでもありますので
文字数はやや多くなりますが、じっくり書いていこうと思います。

過去の日誌は以下のリンクよりご覧いただけます。
施工日誌①概要編
施工日誌②地盤調査編
施工日誌③地盤改良編
施工日誌④鉄筋工事編
施工日誌⑤基礎・コンクリート工事編

基礎の断面図はこちら。
今回の内容は図面上の「発泡硝子ボードt=100」部分の施工となります。

発泡ガラスボードとは?

製品としてはドイツ・グラポール社のセルラーガラスボードというものです。
発泡ガラス断熱材そのものは昔からあるのですが(砂利状のものが一番メジャー)、
このグラポール社の新技術によって、均質で大判のボード状製品
低コスト・低環境負荷で生産可能になりました。

日本ではパッシブハウス・ジャパン所属の数社が国内での試験施工を行っていて、
私たち新津組もテスト施工に参加しています。
主な用途としては、建物基礎の基礎外断熱の断熱材として使われます。

発泡ガラスボードのメリットは?

☆耐熱性・耐久性
 700℃まで変形しない防火・耐熱性。
 季節・昼夜温度差による変形なし。
 紫外線劣化なし。
 細菌・カビによる腐食なし。
 薬品・溶剤による変質なし。
 発泡プラスチック系断熱材との比較で、10~30倍の圧縮強度を持ちます。

☆対シロアリ性能
 シロアリはガラスを食べることができません。
 薬剤で防蟻性能を持たせているわけではないので、経年変化で性能が低下しません。
 (他の製品と同様、接合部からの侵入対策としてメッシュや防蟻接着剤を使う必要はあり)

☆環境性能
 廃ガラスが原料で、使用後に回収して製品に再生することが可能です。
 製造時のハロゲン化合物(オゾン層破壊物質)の使用はなし。
 製品からのVOC(揮発性有機化合物)や有害重金属の発出はありません。

発泡ガラスボードのデメリットは?

☆断熱性能
 熱伝導率はλ=0.050[w/(m・K)]。
 防蟻系発泡プラスチック断熱材の熱伝導率はλ=0.028~0.034[w/(m・K)]ほど。
 同じ用途の基礎断熱材と比べて、断熱性能は約30%劣ります。

☆サイズ・重量・コスト
 国内で取り扱いしているのは現状100 × 800 × 1200mmの1種類のみです。
 1枚の重さは約10.4kg。同サイズの発泡プラスチック系断熱材と比べ、約5倍の重さです。
 材料価格は(各社の仕入れ価格にもよりますが)従来品とほぼ同額か、わずかに高い程度です。

☆耐衝撃性
 圧縮強度はありますが、強い衝撃が加わると割れや欠けが見られることがあります。
 弾性はないので、強く曲げようとすると割れてしまいます。

☆施工性・加工性
 切断はカッターナイフでも容易にできますが、細かい粉塵が飛び散りやすいので
 集じん機や防護メガネ、マスク等の対策が必須です。
 コンクリート型枠に同時打ち込み施工を行った場合、
 深い基礎(基礎高1000mm~)では打設の過程でボードが割れる可能性があります。
 そのため、高基礎ではコンクリート施工後に後貼りとなります。

施工の様子 下地処理

では、実際の施工について解説していきます。

(発泡ガラスボードとは直接関係ありませんが)基礎外側には防水処理を行っています。
ポリマーセメント防水「AEコート」を使用。飲料用水槽にも使える安全性の高い材料です。
基礎の打ち継ぎ部には止水剤を入れてはいますが、
建築地はもともとが田んぼであった土地。念には念を入れた形ですね。
万が一基礎全体が水浸しになっても、基礎内部への浸水を防ぐことができる見込みです。

ガラスボードを貼り付けたときに隙間が生じないように、
コンクリートと防水塗膜が平滑になるよう不陸処理していきます。

施工の様子 貼り付け

今回の施工にはStoJapanさんの技術指導を受け、同社製品をメインに使っています。
発泡ガラスボード側の接着面に水性プライマーを全面塗布。ガラスの粉っぽさを抑制します。
コンクリート側にモルタル系接着剤。プラ系断熱材にも使う一般的なものでOK。

ボードをコンクリートに押し付ければ簡単に接着します。
ボードはカッターで切れるので配管貫通部もその場で対応できます。
ボード接合部はホウ酸系防蟻剤「ボレイトシール」で白アリの侵入をガードします。

施工の様子 メッシュシート・ベースコート

ボード接着後は、グラスファイバーメッシュを伏せ、
樹脂性ベースコートで塗り込んでいきます。

その後は、従来通りモルタル等の仕上げ材を使っていきます。

今回は凍害対策の意味もあり、フルスペックとも言える厳重な施工を行っています。
プラ系断熱材と同様にPGモルタル(樹脂モルタル)をガラスボードに直接施工する場合も
温暖地では大きな問題は起きていないと聞いています。

施工の様子 凍害実験

ガラスボードの一部分を、貼り付けが終わったままの状態で残してあります。
ここに直接樹脂モルタル仕上げを行い、
ベースコート処理を行った部分との違いを観察していく予定でいます。

他社さんの試験施工では、樹脂モルタル仕上げの表面剥離が起きたケースがあったようです。
ただ、剥離があったのは氷点下になる地域で、家の一部の箇所のみ。
他箇所は安定しているようなので、何が原因かは明確にはまだ分かっていません。
弊社を含めて全国で施工データを蓄積している段階ですので、
ガラスボードの最適な工法はこれから徐々に定まっていくのではないかと思います。

施工完了!

発泡ガラスボードの施工が完了した状態です。
基礎コンクリートとガラスボードをほぼ完全に密着させることができました。
これで基礎の熱橋防止・防蟻対策・浸水対策、ばっちりです!
(基礎底盤を貫通する配管周りは、この後にも追加で防蟻処理を行っています)

発泡ガラスボードの施工レポートは以上になります。
断熱性能はやや劣るものの、対シロアリ性能や環境性能に優れる素材。
外断熱の新しい選択肢になると良いですね。

ガラスボードを使ってみたい!というお施主様、設計事務所さまは
パッシブハウス・ジャパンまでお問い合わせください!
(2023.01.28追記)
現時点での国内の取り扱い代理店はStoJapanさまとなっています。
ご興味のあるかたはそちらまでお問合せください。

次回の施工日誌は、土台敷きと基礎内断熱工事です。
次も見どころたくさんです。お楽しみに!

新津

パッシブハウスの建築状況をTwitterとInstagramで公開しています!