パッシブハウス施工日誌17 ~グランドアートウォール編~

こんにちは!
新津組 代表の新津です。

実に約8ヶ月ぶりの施工日誌!
建物本体は2023年8月に完成し、何の問題もなく快適に過ごしています。
ここから更に快適・便利・カッコ良くするための追加工事をいくつか予定しており、施工日誌も不定期に続いていきます。
改めてよろしくお願いします!

今回の工事は道路からの視線を遮るための目隠し塀
特殊工法「グランドアートウォール」にて作ってみました。
弊社で採用するのはこれが初めてなので、簡単に記事としてまとめてみました。(パッシブハウスとはあまり関係ありませんが…)
ぜひ最後までお読みくださいませ。

過去の施工日誌は以下のリンクよりご覧いただけます。

施工日誌01 概要編
施工日誌02 地盤調査編
施工日誌03 地盤改良編
施工日誌04 鉄筋工事編
施工日誌05 基礎・コンクリート工事編
施工日誌06 基礎断熱・発泡ガラスボード編
施工日誌07 土台敷き・基礎内断熱編
施工日誌08 建方(建前)編
施工日誌09 充填断熱編
施工日誌10 付加断熱編
施工日誌11 屋根工事編
施工日誌12 窓工事編
施工日誌13 気密測定編
施工日誌14 外装工事編
施工日誌15 造作・内装工事編
施工日誌16 ゼンダー(換気・空調)編

記事の目次は以下の通りです。

・はじめに:グランドアートウォールとは
・グランドアートウォールを選んだ理由
・基礎工事
・発泡パネル取り付け
・メッシュ貼り~ベースコート塗り
・防水~仕上げ材塗り
・おわりに

はじめに:グランドアートウォールとは

岐阜県で外構デザインをメインに手掛けるGAW INNOVATIONさんが開発した特殊工法です。
フランチャイズで全国展開しており、工事は現地の認定施工店に依頼する形になります。

最大の特徴は「とても軽量で丈夫である」ことでしょうか。
特殊発泡パネル(硬めの発泡スチロールがイメージしやすい)が塀の本体
その上から防水塗装と仕上げ加工を行います。

発泡スチロール系の素材は軽量で長期の耐久性にも優れています。
土木工事で言えば、高速道路の盛土や急傾斜地の安定化・拡幅工事などにも広く使われています。

グランドアートウォールは従来のコンクリートブロック塀と比べ、重量は1/10
控え壁が不要で最大高さ3メートルまで施工が可能です。
本体重量が軽いため、基礎の大きさを小さくすることができます。

塀の形状に自由度があり、仕上げ材も塗り壁やタイル張り、吹付けやサイディングなど豊富に選ぶことができます。

第三者機関での強度検証では
耐風性能:最大瞬間風速60m/s 基準風速34m/s
耐震性能:最大震度7以上(マグニチュード9.0以上)
の強度を持っているようです。
万が一倒壊した際にも、本体が軽量であるため周囲への被害はほとんど無いのではないかと思います。

工事価格は木製や樹脂製のフェンスと比較すると高めになります。
ですが、塀の高さ・デザイン性・耐久性など「グランドアートウォールでしか実現できないこと」が多数あります。
従来工法では不可能だったことができたり、基礎工事を含めてトータルでは安くなるケースもあるかもしれません。

詳しくはグランドアートウォールの公式サイトをご覧ください。

グランドアートウォールを選んだ理由

実は、目隠し塀をどう作るかは建物完成後もしばらく悩んでおりました。
鉄筋コンクリート造か、木造か、樹脂製か?
さまざまな工法と比較し最終的にグランドアートウォールを選ぶことにしました。

・(RC造と比較すると)基礎を小さくできる
・(木造と比較すると)長期の耐久性が高く、控え壁が不要
・(樹脂と比較すると)建物本体と同じ仕上材が選べるので質感が良い

これらの理由です。

上の画像は不採用となった断面図
塀をすべて鉄筋コンクリート造として構造設計した場合、このように巨大な基礎が必要でした。
特に、庭側に突き出した長さ2メートルの底盤がネック。これは建物の基礎に接触するくらいの大きさです。

これをグランドアートウォールに変更すると、画像内の赤線まで基礎を小さくすることができます。
鉄筋もダブルではなくシングルでOKに。
コスト面でもRC造よりグランドアートウォールの方が安くなる見込みとなりました。

基礎工事

ここからは実際の工事の様子を紹介していきます。
まずは基礎の施工からです。

床掘りをして砕石を転圧しました。
佐久市の凍結深度は600mm。砕石下でその厚さを確保するようにしています。

基礎を貫通するパイプは雨水排水用。
家の雨樋から落ちた雨を、塀の外側にある雨水浸透マスへ流す役割です。
基礎には水抜き穴も付けて、塀の内側に水が溜まるのを防ぎます。

砕石の上に捨てコンクリートを打ち、更にその上に鉄筋を並べ型枠を組みます。
鉄筋はシングル。シンプルな構造ですね。

型枠が組み上がったら、鋼製の支柱を立てていきます。
グランドアートウォール本体の発泡パネルを固定する役割があります。

支柱をアップにするとこんな感じ。
L型の開いた側が内側になるよう並んでいます。
住宅のアンカーボルトと同じ要領での施工ですね。

基礎コンクリートを打設しました。
支柱が動くことのないよう、鉄筋を溶接して仮止めしています。
床掘りから打設完了までの所要時間は5日間と言ったところでしょうか。

土日を挟んで、翌週には型枠を外します。
右端に出ているオレンジの管は電気配線用。塀に表札を付けてLEDライトで照らすようにします。

基礎の底盤も短く、シンプルで小さい基礎に仕上がりました!

基礎の埋め戻しが完了した状態を正面から。
支柱は発泡パネルの取り付けまでビニールで保護してあります。
前面道路と敷地には高低差があるため、この基礎は土止めを兼ねています。

塀の手前側のスペースに水道メーターボックスや都市ガスメーターを集め、業者さんによるチェックが敷地外からできるようにしています。
その他に空いたところは花壇や植栽に使う予定です。

次はいよいよグランドアートウォール本体を施工していきます!

発泡パネル取り付け

支柱に発泡パネルを取り付けました!
工場で製作したものを差し込むだけなので、午前中で終わってしまいます。
(そのため作業中の風景を撮り逃しました…)
パネル同士は専用の接着剤で貼り合わせ、上からテープ留めです。

塀を内側から見たところ。
桟木で仮止めがしてあります。

塀を上側から見た様子。
パネルの接合部に支柱が来るように配置しています。

支柱とパネルの隙間にモルタルを流し込みました。
モルタルが硬化して塀が固定されるまで数日待ちます。

仮止めを外し、塀全体が見えるようになりました!
地上部分で最大1.8メートルの高さがあり、道路からの視線をばっちり遮ってくれます。
この段階だと発泡スチロール感が大きいのですが、仕上げで質感がガラリと変わっていきますよ。

メッシュ貼り~ベースコート塗り

発泡パネルの上に特殊メッシュ(グランドアートウォールのロゴ入り!)を貼り、ベースコートを塗っていきます。
塀本体は弾性があり、強風時・地震時などは若干の「しなり」が出て衝撃を逃がします。
追従性のあるメッシュによって仕上材の割れを防いでいます。
ベースコートはこの後の防水材・仕上げ材の下地にもなります。

ベースコートは気温が氷点下になったり雨の降る日は施工できません。
が、作業自体はシンプルなのでメッシュ貼り~ベースコートまで1日足らずで終わります。

防水~仕上げ材塗り

施工がとにかく早いのもグランドアートウォールの特徴。
ベースコートの次は防水、仕上材と続くのですが、作業がスピーディすぎて、工事が完了した段階の写真しか撮れませんでした!
仕上げは建物本体・ガレージと同じジョリパットです。

目隠し塀の施工が完了しました!
この状態で見ると、とても中身が発泡スチロールだとは思えない質感の良さですね。
建物は木造、ガレージはRC造、塀は発泡パネルと三者三様の工法ですが、仕上げ材を共通としたことで統一感のあるデザインが実現しています。

おわりに

グランドアートウォールの施工レポートは以上となります。
決して安価とは言えない工法ではありますが、この工法でしか実現できないことが多々あります。
意匠性・耐久性を兼ね備えた目隠し塀をご希望のかたは、導入を検討してみてはいかがでしょうか。
この記事がなにかの参考になれば嬉しいです。

最後まで読んでいただきありがとうございました!
次の施工日誌はウッドデッキについて書く予定でおります。
こちらも通常とは一味違う材料・工法になりそうです。
次回もお楽しみに!

新津

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