パッシブハウス施工日誌16 ~ゼンダー(換気・空調)編~

こんにちは!
新津組 代表の新津です。

別記事にも書いたように、実は2023年8月よりパッシブハウスでの暮らしがスタートしています。
が、実は換気・空調は住み始める直前まで工事を行っていました。
なので、時系列は前後しますが、このタイミングで施工日誌を配信させていただきます!

パッシブハウス専用に開発された換気・空調一体型ユニット「Zehnder Comfohome(ゼンダー コンフォホーム)」の施工レポート。
じっくりお読みいただければ嬉しいです。

過去の施工日誌は以下のリンクよりご覧いただけます。

施工日誌01 概要編
施工日誌02 地盤調査編
施工日誌03 地盤改良編
施工日誌04 鉄筋工事編
施工日誌05 基礎・コンクリート工事編
施工日誌06 基礎断熱・発泡ガラスボード編
施工日誌07 土台敷き・基礎内断熱編
施工日誌08 建方(建前)編
施工日誌09 充填断熱編
施工日誌10 付加断熱編
施工日誌11 屋根工事編
施工日誌12 窓工事編
施工日誌13 気密測定編
施工日誌14 外装工事編
施工日誌15 造作・内装工事編

Zehnder Comfohome(ゼンダー コンフォホーム)とは

Zehnder Comfohome(ゼンダー コンフォホーム)、以下ゼンダーと呼びます。
ゼンダーは、パッシブハウスに代表される省エネ建築専用に開発された換気空調システム。
従来は別々の機器で行っていた換気・暖房・冷房・除湿・空気清浄といった各機能を1台でまかなうことができます。

日本の定義に当てはめるなら、
・ダクト式の全熱交換型第一種換気システム
・ダクト式のヒートポンプ型エアコン

これらを組み合わせたもの、と言うことができますね。

エアコンとしての能力は冷房で3.5kW、暖房で3.8kW
一般的なエアコンで言えば10畳~12畳タイプ程度の出力です。
決して大きなパワーがある訳ではないので、ゼンダーを採用するためには建物が高レベルの断熱・気密性能を備えている必要があります。

換気経路と空調経路を一体化した空調方式は「給気冷暖房」と呼ばれています。
外部から取り込んだ新鮮空気を、熱交換と空調設備でダイレクトに調節。
従来形式では建物内にいったんすべての外気を取り入れてから空調機器へと空気を回しますが、給気冷暖房では外気が空調機器を経由してから建物内に入ることになります。
温度・湿度のコントロールに優れ、給排気ダクトと空調ダクトを兼用でき、メンテナンスも1機器のみを行うだけで済みます。
日本メーカーからも徐々に給気冷暖房機器が発売されるようになっています。

私も含めて実務者から「ゼンダー」と呼ばれることが多い機械ですが、実は「ゼンダー」というのは会社名
Zehnder Groupは1895年にスイスで設立され、換気・空調分野では世界的な企業です。
Zehnder社が立ち上げた中国法人において、アジア市場向けに開発された新商品が「ゼンダー コンフォホーム」なのです。

2023年8月現在、国内で使われているのは換気風量200㎥/hの「CHM200」1タイプのみ。
建物広さとしては床面積150㎡(45.4坪)が目安です。
海外ではサイズの異なるゼンダーがラインナップされており、集合住宅や商業施設など、建物規模に合わせたタイプが採用されているようです。

その他詳細は販売代理店のブラウレーベン様ウェブサイトにてご確認ください。

ダクト計画は余裕を持って

佐久平PH(予定)のダクト配管の計画図。
リビングや寝室などの居室へ給気(SA)グリルを。
トイレや浴室などの非居室に排気(RA)グリルを配置します。

換気システムによっては、臭気の出るトイレや湿度の高い浴室にダクトを繋ぐのは非推奨ですが、ゼンダーの場合は標準で接続が可能です。
(実際に住んでみてもまったく問題は感じられません)
これにより家全体の湿度・湿度管理がより効率的に行えるようになります。

実際のダクト配置は、この計画図から若干の変更が入っています。
施工段階で、ダクト配置を修正した方がより快適に過ごせそう、という打ち合わせがあったためです。

具体的には、
・寝室SAをベッド上からずらし、直接風が当たらないようにする
・洗面所RAを洗濯乾燥機の真上にして、温水洗濯や乾燥時の熱と湿気を回収する
・リビングSAを部屋の東西に均等になるよう配置して、温度ムラを防止する

などです。

今回はダクト配管に余裕を持たせた設計であったため、現場レベルの修正にも対応できました。
ダクト式を採用する際は、ふところ(天井裏スペース)を広めに設計しておくことを強くオススメします!

ダクトの配管は超重要!

ここからは、実際の工事写真で説明していきます。
画像はフレキダクトを1階天井に施工している様子。
フレキダクトはポリエステルやアルミを素材にした軽量ダクト。
鉄などを素材にしたスパイラルダクトは硬くて重く一般住宅では施工が難しいため、フレキダクトが良く使われます。

第一種換気のトラブルやクレームの原因の95%以上はダクトの施工不良だと言われています。
ダクトの配置計画通りに、ダクトの曲がりや潰れがないように施工することがとても重要です。

ダクトのサイズは100Φで、周囲を25tのグラスウールで覆ったタイプ。
内面はポリエステル不織布で消音効果があります。
周りの断熱材は、ビスなどでダクトが傷つくことを防ぐ保護材の役割もあります。

チャンバーを使って各部屋に分岐

画像は浴室の天井裏。
ひしめくダクトの一本一本が換気に冷暖房にと重要な役割を持つため、慎重に施工していきます。

ゼンダー本体から出てくる給排気の本管ダクトは150Φ。
分岐チャンバーを使って100Φに分岐させ、各部屋に回していきます。

分岐チャンバーの内部はこんな感じ。
日本スティーベルの合成樹脂(硬めの発泡スチロール的なもの)製の4分岐タイプです。

給排気グリル

リビングに給気の風が吹き出る部分(=グリル)へとダクトが繋がる様子。
壁紙の仕上がりと並行してグリル機器の取り付けを行っていきます。
パッシブハウス認定には後々の風量測定が必須となるため、測定のしやすさも考慮してグリルを選定する必要があります。
今回はベンテック(パナソニックエコシステムズ)の給気専用ライン型グリルと、給排気兼用の円型グリルの2種類をメインに使いました。

リビングのSAライングリル。
設置位置を高くして、給気の風が人間に直接当たらないようにしています。

洗面所のRA円形グリル。
排気される風の流れもグリルの音もまったく感じ取れませんが、湿気は確実に無くなるという不思議な感覚です。

ゼンダー本体の設置

ダクト配管が終わったら、いよいよ本体との接続を行います。
配置場所はパントリーの天井面にしました。
この直上は個室となるため、作動音・振動音緩和の目的で本体上の天井裏にグラスウールを充填しました。
訪問客へのアピール&メンテナンス時の作業性を考え、本体を露出で吊り下げています。

機能向上策1:電子集塵機トルネックスの接続

ゼンダー単体でも十分高性能なのですが、佐久平PH(予定)ではいくつかの外部機器を取り付けて機能とメンテナンス性の向上を試みています。

ひとつが「電子集塵機トルネックス」
外気(OA)ダクト側に接続し、外からの虫・ホコリ・花粉がゼンダーに入る前に除去します。

トルネックスは電力消費量が少なく、フィルタは水洗いで繰り返し利用でき経済的。
ゼンダー側のフィルタ汚れを少しでも抑えて、メンテナンスコストの削減を目指します。

機能向上策2:温水コイルユニットの接続

工夫のひとつが「温水コイルユニット」
外気(OA)ダクト側、トルネックスの次に外気が通るのがこのユニットです。

冬限定で稼働する装置で、冷たい空気を温水で加熱してエアコン暖房を補助することが目的です。
また、万が一想定を超える寒波が到来した時にも、凍結による熱交換素子の不具合を防ぐデフロスタとしての役割もあります。
熱源の温水は、太陽熱温水器と木質ペレットボイラーで作ったものを使います。

内部にはヒートシンク状の熱交換機器が。
ここに貯湯タンクから不凍液を回して熱を供給するのです。

ゼンダーは設計上-17℃まで対応しているのですが、ヒートポンプ式暖房の性質上、厳冬時は効率が大きく低下してしまいます。
再エネによる熱源で外気を温めることで、冬の化石燃料依存を少しでも減らすことを目指します。

機能向上策3:床下RAダクトの追加

これは外部機器ではないのですが、工夫のひとつ「床下RAダクト」
ゼンダー真下、床下点検口を開けた位置にRAダクト1系統を回してあります。

これは基礎断熱特有の“建築初年度の床下の湿気問題”を解決するための措置。
打設直後の基礎コンクリートから発生する水分が床下に滞留することを防ぎます。
(詳しく説明しようとすると記事一本分くらいの文量が必要なので、ここで簡潔に切り上げます)

室内機器の設置完了!

ゼンダー本体の設置が完了しました!
スペース的な余裕を持って各機器にアクセスできる位置関係となっています。

室外機の設置

ゼンダーロゴ入りの室外機。ごく一般的な形状ですね。
国内ではまだ珍しい寒冷地対応モデルの室外機だそうです。
現在のゼンダーの採用は西日本がメインですが、寒冷地対応モデルが出たことで今後は北信越~東北にも広がっていきそうです。

ドレン管のポコポコ音の防止

逆流防止弁「ウォレス自封式トラップ」を取り付けました。

高気密住宅ではエアコンからポコポコ音がすることがあります。
レンジフードを動かした時や、外から強風が吹き込んだ際に、エアコンのドレンホース(水抜き管)から空気が逆流するのが原因です。
場合によってはムカデなどの虫さんの侵入経路となることも…。
防止弁で確実に塞いでおくのがベターですね。

ゼンダー起動!

無事にゼンダー・コンフォホームが起動しました!
操作はタッチパネルで行います。
強烈な猛暑のなか稼働したばかりなので、室内の温度・湿度がひどいことになっています…。

実は、冷房の開始後から2~3日は温度がなかなか下がらない現象が起こりました。
これはもともと想定していたもので、躯体全体が夏の熱をたくさん蓄えてしまっていたことが原因。
“高断熱住宅あるある”で、真夏や真冬は空調立ち上がりから躯体温度が安定するまで数日間を要するのです。

おわりに

ゼンダー施工日誌は以上となります。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました!

高性能機器ですが、ネット上にはまだあまり体験談が出ていない特殊な機械
今後は実際に使ってみてのレポートも上げていこうと思います。
引き続きよろしくお願いします!

新津

パッシブハウスの住み心地はTwitter(X)とInstagramでも随時公開しています!

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