基礎断熱と床断熱、どちらを選ぶのか?① ~床断熱編~

こんにちは、新津組 代表の新津です。
今回のテーマは基礎断熱と床断熱。
(床下断熱とも言いますが、ここでは床断熱と呼びます)

私も自宅を建てるにあたって、基礎断熱と床断熱のどちらが良いのか、
かなり悩んで色々と調べた経験があります。
家づくりを検討している方だけでなく、住宅を建てているわれわれ実務者にとっても
基礎断熱と床断熱どちらを選ぶかは「永遠のテーマ」と言えるほど難しい課題です。

最終的に、自宅では「基礎内外断熱」を採用することにしました。
メンテ・補修等で自社で建てたさまざまな建物を見た経験、
パッシブハウスを建てるにあたって新たに学んだ知識など、
自分自身の考え方の整理を兼ねて、このブログ記事にまとめていきたいと思います。

実はこの記事、もともとは発泡ガラスボードの施工日誌に入れる予定でしたが、
書いているうちにどんどんと文量が増えていってしまったので、別の記事として独立させることに。
しかも1記事には到底まとまらず、ついにはシリーズ物の大作になってしまいました。
基礎はそれだけ情報量が多いということでもありますね。

はじめに:注意書き!

この記事は長野県東信エリアの住宅を想定して書いています。
以前のブログでも書いた通り、本州でも最も寒く、北海道とほぼ同等の寒冷地です。
真冬の最低気温はマイナス15~20℃にもなり、凍結深度は600~1000mmという土地です。
日本の大部分の地域とは前提条件・判断基準が大きく異なりますので
それを踏まえたうえで読んでいただければ幸いです。

床断熱と基礎断熱の違いについて

住宅において、基礎~床部分の断熱工法は大きく2つに分かれます。
ひとつが床断熱。もうひとつが基礎断熱です。

床断熱はその名前の通り、床を断熱層・気密層とする工法。
日本で一般的に使われる工法で、大手ハウスメーカーの多くもこちらを採用しています。
束石(つかいし)に柱を立てて家を建てる伝統工法の延長線とも言えますね。
床下には外の空気をそのまま取り入れるかたちになります。

基礎断熱は主に北海道で発展し、近年本州でも使われるようになった工法です。
基礎コンクリートに断熱材を貼り付けて断熱層・気密層とし、床面には断熱材を入れません。
床下が外気に直接さらされることはなく、室内扱いとなります。
基礎断熱はさらに、断熱材をどの部分に設置するかによって3つの工法に分かれていきます。
基礎内断熱、基礎外断熱、基礎内外断熱の3つです。
(基礎外断熱と基礎内外断熱の一種としてスカート断熱という工法も)

今回は、主に床断熱について解説します。

床断熱のメリット

まずは床断熱のメリットについて。
日本で最も一般的な工法で、基礎断熱が盛んな北海道でも新築の半分は床断熱です。
当然、東信地域でも大多数は床断熱が使われています。
一般的な工法であるがゆえに、作り手側も設計や施工に慣れているのが利点
そう言った意味では、大きな失敗をする可能性は低い工法と言えます。

基礎断熱と同じだけの断熱性能を持たせると仮定すると、
断熱材でカバーするのは基本的に床面積と同じ広さだけ。
そのため、使う材料は少なく、施工コストは安くなります。
居住空間のみを暖房・冷房するのでエネルギー消費も少ないです。

地下水位が高い土地でも使うことができ
万が一大雨や河川氾濫等で床下浸水した時にも被害が比較的軽くて済みます。
常に床下に外気を通している状態なので乾燥状態が保ちやすく、カビの発生も抑制。
床下の空気が汚れてもそれが室内に入り込むことがありません。

地面と土台が基礎コンクリートで完全に分断されているため、
シロアリが木材に到達しにくく、防蟻面で優れた工法です。
シロアリが基礎を登る痕跡(蟻道)も見つけやすく、早期の予防が期待できます。

床断熱のデメリット

次はデメリットを見ていきます。
やはりネックなのは断熱・気密の面が大きくなりますね。
外壁・間仕切り・配管貫通部・床下点検口など
気密上の弱点となる場所が多く、徹底した気密処理には手間が掛かります。
不慣れな業者さんでは、高気密の実現はハードルが高くなるかもしれません。

断熱材は基本的に大引間に入れることになるため、入れられる厚さには限界があります。
断熱を床下方面に厚くすると、土台下の床下通気孔を塞ぐ恐れも。
断熱等級4程度の性能では特に問題になることはありませんが、
性能を高めていくにつれ、床の断熱面を強化しきれないことは足枷になります。

床下は断熱ラインの外になるので、床下エアコンや床下放熱器などの
暖房設備を設置することはできません。
床の温度を上げるためには床暖房を使うしかありませんが、
床断熱の断熱レベルで床暖房を使うと床から地盤への熱損失が大きくなります。
せっかくエネルギーを使っても、その多くは地面を暖めるだけ
(熱が地面や基礎を通して建物周囲の外気に逃げていく)になってしまいます。

また、床暖房は故障時の修理や交換がとても大変
当時の部品がなかったり、床暖房メーカーそのものが倒産していたりすることも。
直したくても直せずに放置されたままになっているお宅は
寒冷地あるあるなのではないかな?と思います。

床下に設置する水道配管が凍結しないよう注意する必要もあります。
冬期間使わない別荘では、毎年の水抜きや、不在時も暖房を炊き続けたりといった対策を。
一般の住宅でも、年末年始の里帰りなどで床下温度が下がりすぎる可能性がありますね。

床断熱の場合でも、玄関や浴室周りは基礎断熱を併用するのが一般的です。
床断熱と基礎断熱の境目で断熱欠損を起こさないようにしたり、
空気の流れを意識して気流止めや通気部材を適宜使い分ける必要があります。

また、家の中でいちばん温度が下がって湿気りやすいのが水回りで、
いちばんシロアリ被害が発生しやすいのもこの場所。
ここに基礎断熱を使うのであれば、家全体を基礎断熱にしても
シロアリのリスクは変わらないのでは?
という説もあります。

軽井沢などは自然の多い環境ですので、人によっては「虫」が大問題かも知れません。
虫や動物から見ると、床断熱の床下は適度に温かい/涼しい居心地の良い空間。
防虫ネットの隙間からもいろいろな生き物が入り込んできます。
カメムシ・カマドウマなどは自分の身体を折りたたんで狭いところに入り込めるとか…。

住まい手さんが床下に潜る機会は少ないかと思いますが、
床断熱のおうちの床下メンテナンスは、
虫や埃と格闘しながらの暑い・寒い・キツイ作業です。
実際に目にする機会は少なくても「床下に常に虫が居る」というのは
(精神的に)大きなデメリット
になり得ますね。

まとめ

  • 床断熱は最も一般的で・安く・失敗の少ない工法!
  • 適切な断熱・気密処理をしようとすると一気に難易度が高くなる!
  • 床暖房の採用は十分に検討してから!
  • 虫問題は意外と重要かも!?

床断熱については以上になります。
シリーズの次は基礎断熱についてを予定しています。
これも長い記事になりそうです…。

では、次回もお楽しみに!

新津

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