基礎断熱と床断熱、どちらを選ぶのか?② ~基礎断熱編~

こんにちは、新津組 代表の新津です。
基礎断熱と床断熱をテーマとした記事の第2弾。
第1弾から約2ヶ月も間が空いてしまいました…!

今回は「基礎断熱」に焦点を当ててみます。
4000文字を越える大ボリューム記事となりました!どうか最後までお付き合いください。
※この記事はChatGPT4を使って文章の推敲を行っています。

前回の記事
基礎断熱と床断熱、どちらを選ぶのか?① ~床断熱編~
と合わせてお読みください。

はじめに:注意書き!

この記事は長野県東信エリアの住宅を想定して書いています。
以前のブログでも書いた通り、本州でも最も寒く、北海道とほぼ同等の寒冷地です。
真冬の最低気温はマイナス15~20℃にもなり、凍結深度は600~1000mmという土地です。
日本の大部分の地域とは前提条件・判断基準が大きく異なりますので
それを踏まえたうえで読んでいただければ幸いです。

基礎断熱の種類と選び方


(地方独立行政法人 北海道立総合研究機構 建築研究本部:スカート断熱工法設計・施工マニュアル設計編 より)

基礎断熱には、「基礎内断熱」「基礎外断熱」、そして「基礎内外断熱」があります。
寒冷地では、基礎外断熱が基本です。北海道では基礎断熱は基礎外断熱、あるいは基礎内外断熱を意味します。
「北方型住宅」を広める道総研のマニュアルには、なんと基礎内断熱の工法は記載されていません。
(フラット35の技術基準には基礎内断熱も含まれているので、全国的には認められた工法ではあります)

北海道で生まれた基礎外断熱は本州に広がり、温暖地でのシロアリ被害に対応するため、基礎内断熱へと変化しました。
寒冷地である東信エリアでは、基礎外断熱を基本とし、断熱性能を更に高める場合には基礎内外断熱を選択するのが良いでしょう。

この記事では、「基礎断熱」とは、基礎外断熱、または基礎内外断熱を指すものとして解説していきます。

基礎断熱のメリット

基礎断熱は、床下と室内の温度・湿度がほぼ同じになる特徴があり、床下空間が活用できる点がメリットです。

多く用いられるのが床下エアコンや床下放熱器などの床下暖房
室内の温度を均一にすることは当然快適なのですが、更に足元の温度が1~2℃高い状態になるだけで、快適度がかなり上がります。
「頭寒足熱」という言葉もありますね。
基礎断熱+床下暖房は、床断熱+床暖房よりも省エネルギーになります。

基礎の高さが高い場合、床下を収納スペースにも活用できます。
床下に荷物をしまうことは耐震構造的にも合理的かもしれませんね。
とは言えあまり重いもの・大きいものを大量に収納すると出し入れが大変になるので、床下への入口を大きくするなどの工夫は必要になるでしょう。
災害備蓄品や、子どもが学校から持ってきた工作品や賞状などが適しているかと思います。

気密性能を高めやすいのも基礎断熱のメリット。
基本的には基礎コンクリートと土台の間に気密パッキンを使用するだけ。床断熱よりも簡単に気密処理が完了します。
床断熱のデメリットとして挙げた「虫問題」も基礎断熱では解決します。
床下のメンテナンスもやりやすいです(基礎高にもよりますが)。

基礎断熱のデメリット

基礎外断熱の最大のデメリットは、シロアリ対策の難しさです。
シロアリは地面から基礎コンクリートを登り、土台に達し木材を食害します。
日射や乾燥が苦手なシロアリはコンクリート表面を移動する際に「蟻道」というトンネルを作りながら進みます。
蟻道を目視で確認することが重要な対策のひとつですが、基礎外断熱では蟻道が見えにくいため被害の発見が遅れることがあります。
コンクリートに接している断熱材部分を食い破りながらシロアリが進むケースがあるためです。
条件は不明ですが、薬品で防蟻能力を持たせた断熱材でも食害されることがあるようです。

寒冷地はシロアリが少なく、実は私も実際にシロアリにやられたお家を見たことはほとんどありません。
とは言え被害はゼロではありません。
水回りから土台~床下への軽い水漏れが続いている、といった悪条件であれば、標高1000mを越える地域でもシロアリが発生します。
気候変動による気温上昇が続いているこの時代、寒冷地でも対策はおろそかにはできません。
基礎の外側に使う断熱材は保証のついている防蟻断熱材を選択。
「蟻返し板金」を設置して物理的にガードするのも良いでしょう。シロアリはコンクリートから木材への移動中に、一度金属の表面に出ざるを得なくなります。
以前の記事で紹介した発泡ガラスボードの採用を検討しても良いでしょう。
国内の採用例はまだ少ないですが、シロアリの生態的にガラスは絶対に食い破れないため、基礎コンクリートとガラスボードが密着していればかなりの防御力を発揮するはずです。

シロアリと関連しますが、基礎断熱は床下の空気が室内に循環する可能性があるため、防蟻処理には注意が必要です。
日本で多く使われるのが農薬系の防蟻・防腐剤。これを人間が吸い込むのはあまり好ましくありません。
基礎断熱工法を選択する際は人体への影響が少ないホウ酸系の薬剤を使いましょう。

もうひとつのデメリットはコストの増加。
基礎断熱は、床断熱と比べて同じ断熱性能を実現するために必要な断熱材が多くなり、コストが増加します。
寒冷地の場合、凍結深度の問題から基礎全体が大きくなる傾向があり、基礎全体を覆う基礎外断熱には多くの断熱材が必要になります。
これにより、工事費が高くなることが懸念されます。

次のデメリットは、床下カビ発生のリスクです。
基礎断熱の床下空間は密閉されており、コンクリートから放出される水分によって湿度が高くなることがあります。
コンクリートからの水分放出は、施工時点からおおよそ1年間は続くと言われています。
この高湿度が結露やカビの発生に繋がる可能性がありますが、家ごとの条件によって影響は異なります。
安全を取るのであれば、床にガラリを設けるなど湿度を室内に逃がす工夫が必要かもしれません。

「基礎断熱は、床断熱と比べて床面が冷たく感じられることがある」という説もあります。
これについては後ほど解説します。

(余談)凍結深度とスカート断熱


(地方独立行政法人 北海道立総合研究機構 建築研究本部:スカート断熱工法設計・施工マニュアル設計編 より)

「スカート断熱」という基礎外断熱の一種があります。
これは、建物外周を水平に囲むように(スカートを履かせるように)断熱材を敷き込む工法です。
北海道では、この工法で根入れ深さを軽減し基礎を小さくして、工事コストを下げる方法として普及が進んでいます。

しかし、北海道以外でのスカート工法による凍結深度の緩和は、各都道府県の判断によります。
例えば、佐久建設事務所管内では認められていないと私は記憶しています。

スカート断熱は基礎からの熱の逃げを抑える手段として非常に有効です。
そのため、基礎内外断熱をさらに強化する目的で利用することは検討に値するかと思います。

基礎断熱が本領を発揮する方法


(佐久平パッシブハウス(予定)では基礎コンクリート下の全面に断熱材を敷き込んでいる)

「基礎断熱は床面が冷たくなる」という意見があります。
しかし、高断熱住宅の第一人者である室蘭大学の鎌田紀彦先生は
「土間コンクリート下にも断熱材を施工することで解決できる」と指摘しています。

「鎌田紀彦のQ1.0住宅デザイン論 2022.1.13」より引用します。
「住宅の高性能化が進み、暖房機の出力も小さいもので済み、暖房時間も短くなってくると、暖房停止時に急速に床下の温度が低下するという問題が発生し始めました。
基礎断熱が外周部だけで行われ、床下の土間コンクリート下面が断熱されていないことにより、床下地盤が十分暖まらないことによるものです。(中略)
図で分かるとおり基礎を自動的にすっぽりくるむように工夫した。(中略)
これで熱損失は大きく削減し、床下の温度が下がることもなくなり、基礎の施工も大幅に合理化されます。
これから床下暖房を行う場合には、こうした工法が必須条件です。」

冬場に基礎外周部だけが断熱されている場合、熱が地面の下に移動し、建物の外側に回り込んで外気へ放出されます。
(この熱移動ルートを塞ぐ手法のひとつが、上記のスカート断熱)
地中の温度は外気よりも高く、熱が逃げる距離も長いため、建物全体から見て床下からの熱損失は大きくはありません。
が、快適性・省エネ性を追求するほど基礎下無断熱の悪影響が顕在化します。

ちなみに地中の温度は、地表から7m下になるとその地域の年間平均気温とほぼ等しくなります。
東京であれば約17℃、軽井沢であれば約8℃です。
温暖地では基礎下を無断熱にすることで夏の冷房需要を下げるテクニックもありますが、寒冷地では基礎全体を外側から断熱するのが良いでしょう。
基礎断熱のデメリットである「床下のカビ問題」も、基礎全面の断熱で床下の温度を高く保つことでリスクが軽減されます。

床断熱と基礎断熱、どちらが良いのか

では、床断熱と基礎断熱、どちらを選ぶべきか?
これは建築地の環境や建物のコンセプトによって異なるため、一概に言えるものではありません。
(面白みのない回答かもしれませんが…)

ただ、PHPPのマニュアルには以下のように記載されています。
「中央ヨーロッパと北ヨーロッパの気候帯においては(中略)
床断熱(床下換気口あり)の場合、実経験上問題が生じる傾向にあることが分かっています。
そのため、PHIはこのような工法を推奨していません」

寒冷地の温熱環境を考慮すると、基礎断熱が有利な点が多いと思われます。
例えば、佐久平PH(予定)では、基礎断熱を前提とした設計が採用されており、床下空間の活用や基礎コンクリート水分も意識しました。
床にガラリを設けた上で、温水を熱源とした放熱器による床下暖房を導入しています。

床断熱と基礎断熱のどちらを採用するにせよ、それぞれの工法の特徴を把握した上で決めるのが良いでしょう。
この記事が判断材料のひとつとなれば幸いです。

まとめ

  • 寒冷地では基礎断熱=基礎外断熱!
  • 基礎断熱を選択する時は、床下空間を活用しよう!
  • シロアリ対策は万全に!
  • 基礎外周だけでなく、基礎土間下にも断熱材を!

基礎断熱については以上です。
自宅が完成した際には、床下に温度計・湿度計を設置し、季節ごとの変化を計測する予定です。
データが集まれば、ブログで公開いたします!

次回の記事もお楽しみにお待ちください!

新津

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